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あとがき
A
pp.95
発行日 1960年1月1日
Published Date 1960/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200883
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- 文献概要
出版界に一期を劃するとまでかねがね取り沙汰されていた超豪華本"脳腫瘍"がいよいよ出版の運びになつた。同書は所安夫東大助教授が23年間心血をそそいだ脳腫瘍の病理形態学を氏のlife workとしてここに成書に纒め上げたものである。
脳腫瘍が外科手術によりその剔出に成功した第1例Rickman Godlee 1884年からすでに75年の歳月が経過した。しかしその他の難解な疾患と同じく,脳腫瘍はその見上げる頂きもまた見下すその涯ても未だつかめないほど尨莫としている。腫瘍発生のその成因は誰れにも未だわからない。脳腫瘍が人類の疾患として稀でないことはすでに幾度も論ぜられている。国により報告者によつてかなりの差はあれど平均剖検数の2%内外が脳腫瘍の犠牲と認められる。また暗から暗に未発見のまま葬られて行く数を考えあわせれば実際の脳腫瘍患者はもつともつと多くとも決して少くはないであろう。脳腫瘍は現在脳神経外科の最大テーマであると同時にその関心は今後更に更に深かまつて行こう。同書がその解明の一針ともなれば喜びは無上である。
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