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あとがき
A
pp.551
発行日 1959年6月1日
Published Date 1959/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200815
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- 文献概要
自動車の激増に伴い交通事故もとみにその数を増して来た。現行の道路交通取締法は昭和23年に施行されたものであるから正に一昔前の代物である。現在の推定自動車数が当時の10倍にあたる230万台に激増した今日においてそぐわない面が多々出て来たのも当然の事である。しかもこれらの車が古物とは云え,この交通取締法にでも従って走るならまだしも,多くは無視して所狭しと暴走するから事故が起きないのがむしろ不思議な位である。また例え事故を起しても罰則があまりにも加害者側に恩恵的である為ひいては人命軽視にも繋がりかねない。あつと云う間に手足を折られたり,頭をうつたり取り返しのつかぬ大怪我をする。また運が悪いと生命をも失う。近年の自動車事故の統計によれば,被害者の約75%に頭部外傷が大なり小なり見られるそうである。が,現在の治療技術では到底これらの重傷被害者を救う事が出来ない。甚だ遺憾な事である。
これは医学のみの問題でなく大きな社会問題でもある。交通取締法の全面改正による一罰百戒的な罰則の強化もさる事ながら,それでもつて簡単に問題が解決されると考えるのは少々軽卒であろう。
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