Japanese
English
綜説
生理学と心理学との境
From Physiology to Psychology
本川 弘一
1
Koichi Motokawa
1
1東北大学医学部第二生理学教室
1Dept. of Physiology, Tohoku University
pp.5-23
発行日 1958年1月1日
Published Date 1958/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200634
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橋田邦彦先生は東京帝国大学教授として生理学を御担当になつておられたが,生理学の権威であられると同時にその深い哲学によつて学生を教育し又世人を導かれた方である。先生の科学は土台のしつかりした先生の全人格と融け合つたものであつた。筆者も先生の教えを受けた者の一人として生理学を他の自然科学或は哲学と遊離させることなく広い立場から研究して行かなければならないと心がけて来た。しかし筆者には哲学的素養が欠けているので,ともすれば独善に陥るおそれはあつたが,せめて境界領域の諸科学に気を配つて専攻する生理学と調和させて行ぎたいと思つている。以下の論述も筆者のこうした心づかいの結果であつて日本心理学会や或は外国の心理学の専門誌にはしばしば発表してきたものであるが,医学や生理学方面にはまとめて発表したことがなかつたのでこの機会に御批判を仰ぎたいと思う。
生理学で感覚とか知覚とか申しても,その研究の対象となるのは刺激と,これによつてひき起された生理学的反応に過ぎないのであつてその心理作用そのものには直接触れることはない。心理学でも最近はこうした態度をとる一派(行動心理学派)があつて刺激と反応の関係を追求するに止まる傾向がある。
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