特集 脳波の電気発生
脳波の電気発生について
本川 弘一
1
Koichi Motokawa
1
1東北大学医学部生理
1Dept. of Physiology, Tohoku Univ. School of Medicine
pp.253
発行日 1963年3月1日
Published Date 1963/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201435
- 有料閲覧
- 文献概要
脳波がいかなるメカニズムでどこから発生するかは最も古く,しかも最も新らしい問題のひとつである。スパイク,誘発電位,脳波と並べると局在性の最も低いものが脳波ということになるから,脳波というものは何等かの意味で総合されたものであることは動かすことのできない結論である。つまり集合電位であるが,その集合のメカニズムを知るには要素となるものの知識が必要である。脳波の要素は何であるかはもちろん不明であるが,スパイクとその集合の関係を調べれば,それに類似の関係が脳波の要素と脳波との間に成りたつ可能性もなくはない。そこで,中枢神経系,ことに脊髄のスパイク電位に造詣の深い大谷教授をわずらわしてスパイクと集合の関係を論じていただくことにしてあつた。しかるに,大谷教授には脳波学会をまたずして急逝されたので,その遺稿を中心として荒木辰之助助教授(現教授)に代演していただいた。大谷教授の御逝去に対して深く哀悼の意を表する次第である。
荒木氏の演題は「ニューロンの電気発生と集合電位」であつた。細胞内記録では静止膜電位の変化やシナプス電位のごとき比較的のろい変化で,脳波と関係するかもしれない変化がよく記録できるが,粗大電極ではこうしたものは記録できない。細胞や線維が規則正しく密集して存在する場合には,こうしたのろい変化も粗大電極で捕えられる可能性があることが指摘された。そのほか同期,非同期の問題,反響回路の問題等も論じられ,最近問題になつているグリア細胞の発電等も考慮されねばならぬと述べられた。
Copyright © 1963, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.