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Epidermoid並にDermoidは頭蓋内腫瘍の約1%にみられる稀な腫瘍であるが,この中でもDermoidはEpidermoidよりもより更に稀である。我々は左中頭蓋窩前端に基底を有し左前頭葉内に發育し遂に左側腦室前角と大きく交通する致つた極めて珍らしいDermoidcystの1例を純瞼したので報告する。患者は28歳の男,1952年2月29日入院。16歳のとき癲癇様痙攣發作が1回あつた。1950年12月より頭痛現われ次いで再び1カ月に約1回癲癇發作襲來し,本學精神科を訪ね腰椎穿刺を受け,ノルモマスチクス反應が進行麻痺型を呈したので進行麻痺の診斷の下にペニシリン並にマラリア療法を受けた。この際脳脊髄液は水樣透明,ワ氏反應は陰性であつた。其後腰椎穿刺により一時輕快したが1951年10月頃より視力障害あらわれ,再び癲癇發作起り記憶力減退し,精神遲鈍となり,屎尿の排泄を自覺しなくなつて,頭痛癲癇發作増惡したので再び1951年12月精神科入院,兩側眼底の鬱血乳頭頭蓋X線撮影にてトルコ鞍の破壞あり,腦腫膓の疑いの下に1952年2月26日當外科に轉科.當時Auraの無い癲癇發作の他精神遲鈍兩側膝蓋腱反射亢進,兩側Hoffmann,Oppenheim,Rossolimo,Gordon反射陽性,兩脚輕度の筋硬直あり,腦室穿刺により油滴並に歯ブラシの毛状のものを混ぜる白色チーズ状脂肪塊の浮游せる濃いクサントクロミーの液約200ccをとり室氣と置換Fig. 1. 2. の如きX線像を得た。即ちDermoid−Cystが左側腦室前角に破れ腦室内に内容を排出せるものと診斷された。直ちに左前頭開頭術施行,左前頭葉底部は破膜と厚く硬く癒着す。左前頭葉に於て一部腦質切除し前角に達す,この左前角は同時にDermoid cystの内腔となり境界不明,腦室壁にも脂肪がバター樣に厚く附着し中に多數の無色の短毛を混ず,1部石灰化せる部ありモンロー孔小指頭大に擴大す。内腔腦室内を能う限り,清淨し破膜縫合,骨瓣整復皮膚縫合を行う。顕微鏡的にも浮游せる脂肪塊よりDermoid cystなること證明された。術後は經過良好にして腦脊髄液のクサントクロミー次第に淡くなり,脂肪滴全くなく,インヂゴカルミンにより腦室と脊髄液腔との交通證明され,現在全く神経症状精神症状なし。Dermoid cystが腦室と交通せる例はMiller(1950)が1例報告し,1その以前にはH. Brownが1943年に恐らく最初の例と思われるものを報告しているのみで甚だ珍らしい例と思う。
A clinical case of the dermoid cyst in the left middle cranial fossa, which encroached on the frontal lobe and ruptured in the left lateral ventricle was ventriculographically diagnosed and operated on. Radical removal of the dermoid was not performed. Notwithstanding, the symptoms have taken a favourable turn.
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