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I.ロボトミーの歴史
精神醫學に於ける治療の歴史を顧る時,先ずWagner-jaureggが1917年に進行麻痺に對するマラリアによる發熱療法を發見したことに指を屈しなければならないがこの後今日に至る迄に,劃期的な療法と目されるものは1930年代に相次いで發表せられている。1933年Sakelによるインシユリン衝撃療法,1935年v Medunaによるカルヂアヅオル痙攣療法,1937年Cerletti & Bini及び安河內による電撃療法,而して1935年Monizの創始によるロボトミーがそれである。
之等の獨創的な治療法は夫々深い經驗と周到な準備の下になされたもので,ロボトミーのみがその例外である理由はない。Egas Monizはポルトガルのリスボン大學の教授であるが,この療法をSakelの場合のように經驗的に發見したのではなく,豫ねて前頭葉の機能並に病理に就いての注意深く記録された觀察並に動物實驗に基いて行われたもので,殊に1935年ロンドンで開かれた國際神經病學會で發表された前頭葉に關する報告から示唆を受けていると云われる。彼は多くの機能的の精神病に於ては前頭葉に於ける細胞連絡路即ち神經路に障碍があり,こゝに刺戟が持續的に與えられることに依つて妄想觀念等の病的精神活動を生じるのであるから,かゝる精神病を治療する爲にはこの頑固な神經路を破壞して,患者をして束縛された病的精神活動から解放せしめなければならない。という假説の下に前頭葉前部を白質に於て切斷した。この業績は翌1936年發表せられ1),その外科的手術に對して「前々頭葉白質切截」prefrontal leukotomy或は「精神外科」psychosurgeryの名を與えている。
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