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一 緒言
大腦表面を直接觀察し,腦循環,頭蓋内壓その他の實驗をしようというこころみは古くからおこなわれている。そのためには動物の頭蓋の一部を除去したり,あるいは窓をつけたりして觀察しているが,1811年Ravina22)が犬の穿顱孔へ木製圓筒に時計ガラスのついたものを挿入し腦搏動を觀察したのが頭蓋窓(Skull window)の最初のものである。Donders6)(1850)は四角の頭蓋触損部をつくり,そこえガラス板をはめこみ,ゴムとコロジオンで頭蓋骨に固定し腦搏動の實驗をおこなつた。Ackermann(1858)1)もこのような方法で交感神經切除後の腦血管の變化について記載した。Leyden17)は金屬の枠をつけたガラス窓を頭蓋に挿入しネジ釘で骨に固定した。一方窓に小活栓をつけそこから腦液や空氣を出し入れするようにし,これをもちいて腦壓亢進による腦血管の變化について報告Lた。その後Riegal and Jolly (1871)23),Cushing(1902)1),Hauptmann(1914)11),Lewin(1920)16)およびLee(1925)15)らが大體Leydenと似た方法でいろいろの實驗をおこなつている。しかし頭蓋窓をもつて神經生理學における確固たる研究手段としたのはForbes(1928)7)であるといつてよい。彼は猫をもちいて直徑18mmのガラス板に金屬枠をつけ,この周圍を螺旋として頭蓋缺損部にネジ入れて固定した。一方この金屬枠には注射針がついておりこれから腦液その他を出し入れできるようにした。Forbesら8)はこれをもちいて種々の注目すべき業績をあげた。Wentsler29)はセルロイドでつくつたやゝ複雜な窓を家兎頭蓋にとりつけ長期間觀察に成功した。Sohler,Lothrop and Forbes25)ははじめてLuciteなる合成樹脂をつかつて猫および猿の頭蓋窓をつくり腦血管の研究をおこなつた。以上の方法はすべて動物大腦の一部を直接觀察したものであつたが,1944年Craigら28)はmacacus rhesusの大腦兩半球におよぶ廣範圍の頭蓋窓を作製しLucite calvariumと呼んだ。手術は2回にわけておこなつている。第1回はmacacusを全身麻醉のもとに開頭し上矢状靜脈洞を殘して兩側の頭蓋骨をかじりとり硬膜上から印象劑をもちいて型をとり創をとじる。この型をもとにして取り去つた頭蓋骨と同じものをLuciteでつくり,第1回手術後3〜4日目にふたたび開頭し硬膜をきりとりLucite板をはめこんだうえネジ釘で頭蓋骨に固定する,彼らはこれをもちいて腦外傷の研究をおこなつた21)。作製迄日數を要すること,したがつて手數も多いことなどから1回の手術で作製することがのぞましい。わたくしはいろいろ工夫した結果家兎頭蓋の特殊性(後述)を利用して一次的に透明頭蓋をつくることを考案した。そして手術なる一種の外傷および異物である透明板の家兎腦に及ぼす影響を檢討したところ,術後一定期間は或程度の反應があるのでこの時期をすぎてからこの透明頭蓋をもちいていろいろの實驗をおこなわねばならないことを知つた。透明頭蓋をつくつた家兎20例,解剖學的檢査に10頭の家免をもちいた。
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