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閉塞性腦水腫の治療法としては古來數々の手術法が試みられて來た。然しながら蜘網膜下腔の性質とか,蜘網膜の性質とか,液吸收部としての硬膜下腔,乃至皮下組織の不適當であることゝか種々の障礙のために,これこそ確實に閉塞性腦水腫を治癒せしめる手段と斷言せしむる手術法は絶無といつてよかつた。たゞ近年に至つてDandy(2)は第3腦室底に側頭下開頭で達し,小孔を作つて脚間槽へ向け腦液を流し出すことを試みStookey and Scarff(5)は,前頭開頭により第3腦室前壁の一部をなす終末板を開いて第3腦室に入り,第3腦室を經て更に第3腦室底にも小孔を穿ち,前方では視束交叉槽へ,後方では脚間槽へ腦液を流出せしむることにより,いづれも成功例のあつた事を報告し,the third venticulostomyとして追試さるゝに至つた(第2圖)。又Torkildsen(6)は,後頭部の骨穿孔部より側腦室後角に小ゴム管カテーテルを挿し,そのカテーテルを後頭筋肉下を貫いて後頭下に導き,後頭下の小開頭によりカテーテルの下端を大槽内に固定して,ゴム管により間接に側腦室大槽間の腦液流通を行う手術を考案した。
これら3つの新しい手術法はいづれも夫々ある數の成功例が知られており,從來の腦液を腦室から硬膜下腔や皮下組織に誘導するものと異つて,ある大さを有する蜘網膜下腔たる液槽(Cistern)に注がしむるのであるから,腦液の循環が可能となるのみでなく,交通路が蜘網膜組織でとりかこまれ間もなく閉鎖するというおそれも少いので成功例も得らるゝに至つたのである。吾々もDandy氏法で成功した例,Torkildsen氏手術で成功した例を經驗しておるが,しかし不幸な轉歸をとつたもの無効例も亦經驗した。
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