Japanese
English
総説
成人型シトルリン血症
Adult-onset Type II Citrullinemia
矢崎 正英
1
Masahide Yazaki
1
1信州大学医学部第3内科
1Third Department of Internal Medicine, Shinshu University School of Medicine
キーワード:
citrullinemia
,
argininosuccinic synthetase(ASS)
,
citrin
,
liver transplantation
Keyword:
citrullinemia
,
argininosuccinic synthetase(ASS)
,
citrin
,
liver transplantation
pp.1015-1025
発行日 2003年12月1日
Published Date 2003/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406100569
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はじめに
シトルリン血症は,尿素回路の律速酵素であるアルギニノコハク酸合成酵素(ASS)の異常により,高シトルリン血症,高アンモニア血症をきたす疾患である1~5)。シトルリン血症はASS酵素異常により3型に分類され,ASS遺伝子の異常に基づく新生児小児期発症の古典型シトルリン血症(I型・III型シトルリン血症)と成人型シトルリン血症(II型シトルリン血症,CTLN2)に分けられている4, 6~8)。
成人型シトルリン血症は,ASSの肝細胞における低下(ASS蛋白の量的低下)により高アンモニア血症・高シトルリン血症をきたす常染色体劣性遺伝性疾患で,未治療では予後不良の代謝性脳症を引き起こす。本疾患は,ASS遺伝子自体やASS mRNAの発現には異常がなく長年病因不明の疾患であったが9~11),1999年に本疾患が第7染色体上にあるcitrin遺伝子(SLC25A13遺伝子)の異常に起因することが明らかにされ12),その病態や発症のメカニズム,頻度なども徐々に明らかにされつつある。また遺伝子異常をホモ接合体で有する頻度も1/20,000以上と推定されており,決して稀な疾患ではない13)。近年本疾患に肝移植療法が奏効することが報告され,生命予後のみならず中枢神経系の機能保持という観点からも,できるだけ早期にかつ正確な診断をつけ,治療方針を決定することが非常に重要となってきている14)。
本稿では,成人型シトルリン血症の臨床的特徴,病因・病態,その治療法などについて自験例での結果も含めて紹介したい。
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