Japanese
English
総説
ストレス由来の情動記憶を担う脳内回路機構―PTSDの生物学的背景を求めて―
Brain Circuits Involving Emotional Memory of Stress : Seeking the Biological Background of PTSD
井沢 優美
1,2
,
瀧田 正寿
2
Yumi Izawa
1,2
,
Masatoshi Takita
2
1筑波大学バイオシステム
2独立行政法人産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門ニューロバイオニクスグループ
1Biosystem, University of Tsukuba
2Neurobionics group, Institute for Human Science and Biomedical Engineering, National Institute of Applied Industrial Science and Technology(AIST)
キーワード:
amygdala
,
feared conditioning
,
hippocampus
,
post-traumatic stress disorder(PTSD)
,
prefrontal cortex
Keyword:
amygdala
,
feared conditioning
,
hippocampus
,
post-traumatic stress disorder(PTSD)
,
prefrontal cortex
pp.215-224
発行日 2003年3月1日
Published Date 2003/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406100453
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はじめに
心的外傷後ストレス障害(post-traumatic stress disorder:PTSD)や動物実験の恐怖条件づけのように,好ましくない記憶はどのように長期間保持されるのか。また,それは嬉しいことや名前などを記憶する神経機構と異なるのだろうか。近年,学習記憶の最小単位は,活動依存的に神経伝達効率を増減し,それを維持する神経の可塑的性質であるとされ,これは他の記憶とともに恐怖条件づけにも関与すると考えられている。一方,PTSD患者の器質または機能的な脳不全が報告され,神経可塑性の機能低下も伴うはずであるが,症状は保持される。神経細胞レベルからだけでは理解に限界があると思われ,PTSDと恐怖条件づけにともに関わる扁桃体,海馬,前頭様皮質の個別機能とその間の機能連関について,ストレス研究も省みつつ脳回路レベルからの理解を目指して総説とした。
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