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はじめに
人は生まれた直後から多様な感覚系から得られる情報を記憶しながら生きている。真偽はともかく「胎児であった頃の記憶がある」という人もいることを考えると,実際には生まれる以前からの個人的経験が人格形成に寄与している可能性もある。ともかく,人は意識下,無意識下でさまざまな物事を情報として記憶し,現在,および未来に反映させながら生きている。しかしながら,この「記憶した過去の出来事を想起し,現在に反映させる」というあたかも簡単であるかのように行われる行為は,そもそもヒト特有のものであるといった主張もあるほど特異な現象である1)。そういった意味では,この「時間軸を伴った記憶」こそがヒト,そして個々人という概念を成立させる重要な因子であるともいえる。
これまで記憶に関する多くの研究がなされてきたものの,時間に関連する記憶を含め,その脳内メカニズムにはいまだ不明な点が多く残されている。今回は特に時間に関連した記憶に焦点を絞ってみていきたいと思うが,そもそも時間に関わる記憶は,一般的にいわれる「記憶」の中でも,どのような分類に位置しているのだろうか。また,その記憶はどのような脳機能によって担われているのだろうか。そして,そのような時間的概念を含む記憶を持つのは本当にヒトだけなのだろうか。本稿では,簡単にまず記憶の定義についてまとめつつ,時間的概念を伴った記憶について,これまでヒトや動物モデルで得られてきた知見をもとに概説していきたいと思う。
Abstract
The human mind develops through history within the passing of time. Thus, what determines the passing of time in the human mind? For example, when you are asked about yourself 10 years before now, you are able to answer by tracing back through your own experiences. You will be confident of your answer as far as you rely on your memory. Therefore, your personal memory is critical for the passage of time; however, how memory that allows for mental time travel is formed or maintained in the brain is largely unknown. This type of memory may exist only in humans. In this article, we review past studies on memories that emerge from time information in human and experimental animals.
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