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症 例 55歳,男性
臨床経過および画像所見 2002年5月下旬から時々両側の四肢がしびれるため,近医を受診した。頭部CTにて右後頭葉に異常陰影が認められ,血管奇形などが疑われたため2002年6月15日当科に紹介となった。来院時,明らかな神経脱落症状は認めなかった。頭部MRIとMR angiography(MRA)を撮像すると,右後頭葉に右後大脳動脈をmain feederとする約5 cm大の脳動静脈奇形(AVM)が認められた(図1)。画像上では出血の既往はなく,無症候性のAVMと考えられた。患者は脳血管撮影による精査は希望しなかったため,それに代わる検査手段としてMR-digital subtraction angiography(MR-DSA)を撮像した。MRI用造影剤は3 ml/秒の速度で末梢静脈に15 ml(0.2 ml/kg)投与した。MR-DSAにて右後大脳動脈の鳥距動脈と右中大脳動脈の角回動脈をfeederとし,nidus,さらに直静脈洞,横静脈洞,ガレン静脈洞に流入するdeep drainerが描出され、Spetzler-Martin分類3)Grade IVのAVMと診断した(図2)。患者は外来での経過観察を希望したため,その後年1回MRIとMR-DSAを施行し,約3年間経過を観察したが,画像上の変化はみられない。
コメント
MR-DSAは二次元撮像法の比較的厚い数cmのスライスを用い,1秒に1枚程度の画像収集を行い,造影剤到着後の画像から前の画像をサブトラクションしたものである。MR-DSAの空間分解能は十分とはいえないものの,今までのMRAでは評価不能とされた血行動態の評価が可能となった。MR-DSAはAVM4)の他,dural arteriovenous fistulae1)やmeningioma2),glioma5)などにおいて,その補助診断や血行動態の評価に有用であると報告されている。MR-DSAは,撮像方向が1回の検査で単一方向の撮像に限られるなどの問題点もあるが,非侵襲,かつ簡便な検査法であり,血行動態の評価が必要な症例では外来でのfollow-upなどに有用と考えられた。
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