Japanese
English
総説
ALSとAMPA受容体
AMPA Receptor-Mediated Neuronal Death and Amyotrophic Lateral Sclerosis
日出山 拓人
1
,
河原 行郎
1
,
郭 伸
1
Takuto Hideyama
1
,
Yukio Kawahara
1
,
Shin Kwak
1
1東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻神経内科学
1Department of Neurology, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo
キーワード:
ALS
,
AMPA receptor
,
GluR2
,
ADAR2
,
RNA editing
Keyword:
ALS
,
AMPA receptor
,
GluR2
,
ADAR2
,
RNA editing
pp.585-598
発行日 2005年7月1日
Published Date 2005/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406100055
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はじめに
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:以下,ALS)は,1870年代にJean-Martin Charcotにより疾患概念が確立してから約130年となるが,今なお原因不明で治療方法の乏しい神経変性疾患である。運動ニューロンだけがある時期から何故突然死ぬのか,という機序は依然として解明されていない。ALSの発症率は人口10万人あたり0.5~3人程度,有病率は2~8人程度であり90%以上が孤発性である。患者は病末期に至るまで,意識,知能が保たれ,運動機能の障害により日常生活動作に介助が必須であるため,患者本人のみならず介助者の物心面での負担は大きく,治療法の早期開発が切望される疾患の1つである。
最近われわれは,孤発性ALSの疾患病態と直接関わっていると考えられる脊髄運動ニューロン選択的な分子変化を明らかにした。すなわち,ALS脊髄運動ニューロンでは,グルタミン酸受容体であるAMPA(α-3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazole propionic acid)受容体チャネルのCa2+透過性を亢進させる分子変化が疾患特異的,細胞選択的に起こっていることを見い出し,この分子変化が神経細胞死の直接原因になることから,ALSの病因と考えられることを明らかにした1)。この発見は,機能分子の異常が細胞死と直結している点で病因の解明のみならずALSへの治療の道を切り拓く可能性を大いに期待させるものである。本稿では,われわれのグループの研究で明らかになった新たな知見と,最近のALSの研究成果について報告したい。
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