Japanese
English
試論
心的外傷後ストレス障害PTSDは解離性障害か恐怖症か
Is PTSD Dissociative Disorder or Phobia?
漆原 良和
1
Yoshikazu URUSHIHARA
1
1市立岸和田市民病院精神神経科
1Department of Psychiatry, Kishiwada City Hospital
キーワード:
PTSD
,
Phobia
,
Dissociation
,
Numbing
,
Phenomenology
Keyword:
PTSD
,
Phobia
,
Dissociation
,
Numbing
,
Phenomenology
pp.1117-1126
発行日 1999年10月15日
Published Date 1999/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904864
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はじめに
心的外傷後ストレス障害PTSD(以下PTSDと略す)という概念は1980年にDSM-IIIで初めて登場した。きっかけは当時アメリカが抱えていた深刻な社会問題であった。ベトナム戦争帰還兵によく見られる精神神経症状が,既存の精神医学的疾病分類になじまず,新しい疾病概念が必要とされた。ベトナム戦争帰還兵の約15%がPTSDに罹患したと報告されている44)。さらにもう1つの重大な社会問題,レイプや幼児期の性的虐待の被害者(主に女性)に高率に同様の症状群がみられたことがPTSDの概念の確立を後押しした。同国の女性の約25%がレイプ被害経験者という社会状況23)では,この精神神経症状を見過ごすことはできなかった。その後,同様の症状が,それ以外の個人的な出来事でも幅広くみられることがわかり3),PTSDの概念は急速に精神科臨床に普及している。
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