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■はじめに
精神分裂病の急性期治療は薬物療法の導入によって大きく変化したといわれる。数十年にわたるその臨床的経験の蓄積を通して,精神分裂病の薬物治療についてこれまで多くの報告がなされてきたが,実際の臨床場面で有用な薬物治療ガイドラインについては十分に論じられてきたとは言いがたい。これは疾患単位としての精神分裂病が他の精神疾患にもまして複雑,多様,不均質であることや単に薬物療法だけでは解決しえない側面が多々あること,さらには,ドパミンD2受容体遮断という比較的共通した作用機序を有する薬物が次々に開発されてきた歴史的経緯があり,治療薬選択のバラエティーに乏しかったことなどとも関係していると考えられる。
しかし,最近になって,国際アルゴリズム・プロジェクト(International Psychopharmacology Algorithm Project;IPAP)による精神疾患薬物治療アルゴリズムの米国版が発表されたのに続いて,米国専門家による標準ガイドライン・シリーズの一環として精神分裂病と感情障害の治療ガイドラインが,さらには,アメリカ精神医学会(American Psychiatric Association;APA)から精神分裂病治療のための実践的ガイドラインが相次いで発表され,精神分裂病に対する薬物療法に関しても,臨床場面で実際に役立つような合理的な薬物選択アルゴリズム作りの機運が高まってきた。我が国でもこれを受けて,日本の現状を踏まえた独自のアルゴリズム作りが現在進行中である。本稿では,精神分裂病の急性期治療に関して,IPAPによる薬物治療アルゴリズム米国版20),米国専門家による標準的治療ガイドライン5),APAによる実践的治療ガイドライン3)を簡単に紹介し,続いて,我が国で作成されている薬物治療アルゴリズムの原案について,その概略を紹介してみたい。
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