「精神医学」への手紙
Letter—Pisa症候群に遅発性ジスキネジアを合併した精神分裂病の1例/Letter—シメチジン投与中に舌のジスキネジアが生じた若年者の1例
今泉 寿明
1
,
稲田 脩
1
,
山本 純史
2
,
寺尾 岳
2
,
吉村 玲児
2
1可知病院
2産業医科大学神経精神科
pp.446-447
発行日 1993年4月15日
Published Date 1993/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903441
- 有料閲覧
- 文献概要
症例は37歳,女性。27歳で迫害妄想が初発し,34歳から抗精神病薬(NL)の継続投与を受けたが寛解に至らず急性増悪を頻発していた。薬剤の工夫を重ね,haloperidol(HP)15mg,Ievomepromazine(LP)150mg,biperiden 4mgに,lithium carbonate(Li)600mgを追加してやっと安定が得られた。上記処方に固定して4カ月目,体幹が左側に約30度屈曲し軽度後方に回転した姿勢異常を持続的に認めた。自覚的な苦痛は訴えず,数分間は自ら姿勢を矯正できた。他の神経学的所見はなく,ジストニアの家族歴は否定され,頭部X線CT,カルシトニン,セルロプラスミン,銅を含む血液検査も正常であり,Pisa症候群(PS)1)と診断した。精神症状への影響を考慮し,Liは同量継続,NLをHP 3mg,LP 40mgに減量,抗コリン剤をtrihexyphenidyl 12mgに変更,増量したところ10日目頃にはPSが消失した。しかし,2カ月後,口唇,眼周囲に遅発性ジスキネジア(TD)が出現し,軽症ながらPSも併存した。TDを標的にtiapride75mgを追加すると,両者は並行して改善し3カ月後に消失した。薬剤を漸減,整理し,thioridazine 50mg,Li 600mgのみで1年間経過をみたが,精神・神経症状の再燃はない。
PSは稀な副作用である。
Copyright © 1993, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.