「精神医学」への手紙
Letter—lithium投与中に掌蹠角化症を生じた1例
寺尾 岳
1,2
,
吉村 玲児
2
,
江頭 和道
2
,
白土 俊明
1,2
,
林 剛司
1
1日立健康管理センタ
2産業医科大学精神医学教室
pp.1020
発行日 1993年9月15日
Published Date 1993/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903526
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症例は41歳の男性。amitriptyline 75mg/日とflunitrazepam 4mg/日の就寝前一括投与で,抑うつ状態はほぼ寛解していた。1993年1月下旬,不眠が増強したため催眠効果を期待してamitriptylineを75mgから100mg/日に増量したところ,まもなく軽躁状態を生じた。そこで,2月5日にamitriptylineを中止し,lithiumを600mg/日から開始した。その結果,速やかに鎮静されたため,2月10日より再びamitriptyline 50mg/日を開始するとともに,lithiumは800mg/日に増量した。
この頃から,手指の角化が過剰となり白く乾燥した。患者は書類のページをめくりにくくなったと訴えた。踵も過角化を生じ,亀裂を生じた。気分的には安定していたため,3月12日にlithiumを400mg/日に減量した。他の向精神薬は変更していない。同月26日には指先や踵は白く乾燥していたが,踵の亀裂はわずかとなった。同日より1週間はlithiumを200mg/日に減量し,その後中止としたところ,4月9日には踵の亀裂は消失し手指の白い乾燥も軽快していた。さらに4月23日には,角化そのものが軽快し手足ともに滑らかとなり,患者は書類のページがめくりやすくなったと語った。
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