Japanese
English
研究と報告
皮膚寄生虫妄想を呈したアルコール多量飲用者の1例
A Case of Alcoholism with Delusion of Parasitosis
永瀬 文博
1
,
赤崎 安昭
1
,
野間口 光男
1
,
森岡 洋史
1
,
長友 医継
1
,
松本 啓
1
,
中川 潔
2
Fumihiro Nagase
1
,
Yasuaki Akasaki
1
,
Mitsuo Nomaguchi
1
,
Hirofumi Morioka
1
,
Itsugi Nagatomo
1
,
Kei Matsumoto
1
,
Kiyoshi Nakagawa
2
1鹿児島大学医学部神経精神医学教室
2三州病院
1Department of Neuropsychiatry, Faculty of Medicine, Kagoshima University
2Sanshu Hospital
キーワード:
Cenesthesia
,
Delusion of parasitosis
,
Alcoholic neuropathy
Keyword:
Cenesthesia
,
Delusion of parasitosis
,
Alcoholic neuropathy
pp.1105-1109
発行日 1991年10月15日
Published Date 1991/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903131
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【抄録】 皮膚寄生虫妄想を呈したアルコール多量飲用者の1例について報告した。症例は52歳の男性で,30年間にわたって多量のアルコールを飲用していたが,知人の死を契機に,陰部を中心に下肢や背部に激しい体感異常が出現した。そしてこれらの体感異常に対しては,亡くなった知人の霊がダニ様の虫になり代わって引き起こしているのだと妄想的に解釈していた。本症例においては,断酒と抗精神病薬投与により,妄想的解釈に変化はみられなかったが,体感異常は比較的速やかに消退した。
本症例は,長年のアルコール多量飲用に基づく末梢神経障害,インポテンス,痔核といった基礎疾患により皮膚の感覚変化が生じ,これらが体感異常を発現させる基盤になったと考えられた。そして,知人の死による孤立的,疎外的な不安状況,および知人に対する罪悪感が心因として加わり,体感異常を妄想的解釈に発展させたものと考えられた。
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