紹介
「精神病理学と脳」を読んで
丹羽 真一
1
1福島県立医科大学医学部神経精神医学講座
pp.1039-1041
発行日 2001年9月15日
Published Date 2001/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902501
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
本書「精神病理学と脳」は1983年に出版されたFlor-Henryの著書Cerebral Basis of Psychopathologyの邦訳(秋元波留夫監訳,藤元登四郎訳)であり,1999年に創造出版から刊行された。訳者の藤元登四郎氏は1969年に東京大学医学部を卒業された後フランスはサルペトリエール病院で精神医学を学ばれ,出身地の宮崎に戻られた後に精神疾患の病態の生物学的研究を行ってこられた臨床精神医学研究者である。
藤元氏は秋元波留夫先生と親交を持たれており,本書は秋元先生が監訳者となっておられる。秋元先生が監訳者となられたことにはむろん理由があり,先生ご自身の学問的関心領域とFlor-Henryのそれとが重なっているからである。秋元先生が監訳者序文で書かれているごとく,Flor-Henryが1969年に論文「Psychosis and temporal lobe epilepsy:A controlled investigation」を雑誌Epilepsiaに発表したのを読まれ,「側頭葉てんかんに併発する精神障害の病態が脳半球の側方性と関係があり,分裂病様病態は優位半球(多くは左脳半球)の焦点に関係があるとする斬新な主張に注目」され,「分裂病については,気脳写で脳室拡大に左右差があり,多くの場合優位側の方が顕著であることが周知の事実であったので,著者の発想は精神疾患全般に適用される原則であるかもしれない」と,秋元先生が感心されたことが出発点となっている。
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.