「精神医学」への手紙
精神医学における2つの「知」
長嶺 敬彦
1
1清和会吉南病院
pp.432-434
発行日 2000年4月15日
Published Date 2000/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902211
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はじめに
真実は1つであるとしても,そこに至る手法は必ずしも1つとは限らない。科学的手法を用いた明解な医学論文でさえ,真実を100%その通りに表現しているわけではない。あくまでも真実に近似し,表現しているにすぎない。さらに科学的手法による数量化されたデータより,定量化できない感覚によるデータのほうが,より真実を伝えていることもある。
最先端の明解な医学論文と臨床現場の隔たりを感じていたところ,本誌第41巻第11号の2つの論文を拝読し,共感,賛同した。「精神医学における科学性,知性,倫理性」という前田久雄氏の巻頭言3)と,「精神医学は本当に日進月歩?」という藤川徳美氏の「精神医学への手紙」1)である。両氏とも,精神医学が発展していくには,科学的手法を精神医学に応用するだけでは不十分で,目の前の患者さんに向き合い,そこからいかに真実を見つけていくかが大切であることを強調しておられた。両氏の視点を「科学の知」と「神話の知」という文脈で読み直してみたい。
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