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はじめに
エリック・バーンが1950年代後半から提唱し始めた交流分析は,精神内界を簡潔明瞭に説明しているため精神分析の口語版ともいわれているが,その交流分析の中の構造分析にエゴグラム理論は属している。当初のエゴグラムは直観的な判断をもとにして作成されるため,信頼性,妥当性の面で不十分な点があったが,東大式エゴグラム(以下TEGと略す)は,多変量解析によってエゴグラム理論を裏づけしている2)ため,これらの問題点は解消されている。
ここで,TEGプロフィールの略号に簡単に説明を加えておく。TEGプロフィールの中のCPは批判的な親(critical parent;CP),NPは養育的な親(nurturing parent;NP),Aは大人の自我状態(adult;A),FCは自由な子ども(free child;FC),ACは順応した子ども(adapted child;AC)である。TEGはこの5つの観点から自我状態を把握しようとするものである2)。
現在TEGは,医療機関はもとより会社の適性部門判定にまで広く使用されるようになってきている。これは自我状態を5つの尺度に分けて点数化しただけでなく,それらがどのように相互作用を及ぼしているかについて,標準偏差で修正し各々の尺度を結んだ形で簡易に判断できるところにある2)と思われる。我々精神科医にとっても,被験者に負担を感じさせず施行できるため外来で気兼ねなく勧めることができ,さらに一般の方でも理解しやすいため,その結果を面接の際の導入に使用したり認知療法に役立てたり,簡易で便利な検査法と思われる。エゴグラムは,もともと精神科的疾患の診断に使用する目的で作られたものではないが1),TEGはかなりの精度で心理状態をとらえることができるため,TEGプロフィールに患者の精神症状がどのように反映されているか検討してみる価値はあると思われる7)。今回,我々は精神分裂病と診断された患者の初診時におけるTEGと精神症状との関係について検討を試みたが,解析にTEGの長所が生かせるよう若干の工夫を加えてみたので,その結果を報告し考察を加える。
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