特集 「治療を終える」に向き合う
【統合失調症】
〈column〉
編者より:統合失調症の「仲間と居場所と可変性」
福田 正人
1
1群馬大学
pp.1592
発行日 2024年12月15日
Published Date 2024/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405207455
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統合失調症は寛解しても治癒しない病気であるとされてきた。しかし,「十分に社会参加ができれば,病気は社会的には治っている」のだから,「控え目に寛解と解釈していた状態を,もっとポジティブに捉えてよい」(大森哲郎氏)と考えられるようになってきている。
薬物治療については,「治療終結が可能な患者を探す研究」が進んでいて,「治療終結を希望する患者の気持ちは強いが,精神科医の側にその希望に向き合う準備ができているとは言えない」(橋本直樹氏)。心理社会治療においては,「『治療を終えたい』とする患者の望みに対して丁寧に向き合う共同意思決定のプロセスは,当事者との信頼関係の構築に寄与するだけでなく,治療への動機づけやリカバリーにも資する」,「外来治療において統合失調症の心理社会的治療が提供できる体制の構築」が「日本の精神医療の構造的な課題」である(藤井千代氏)。「車いす利用者に対する段差のない社会環境や視覚障害者に対する点字ブロックに相当する」社会の支援と理解の不足に目を向けるとともに,「社会参加が広がるにつれて,ハンディキャップと見えていたものが縮小し,少なくとも症状レベルでは病気そのものが改善する」という「残存症状とハンディキャップの双方向の可変性」への気づきが必要だという(大森氏)。
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