特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る
ディベート・セクション 10番勝負
心原性脳塞栓症(心房細動例)に対する急性期ヘパリン投与
編者からのコメント
平野 照之
1
1杏林大学医学部脳卒中医学教室
pp.500
発行日 2023年3月10日
Published Date 2023/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402228793
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エビデンスはないと言われながら長年,慣習的に行われてきたヘパリン少量持続点滴療法(APTT値によらず10,000単位/日で固定)である.塞栓症を疑えばルーチンで使用するという施設は(編者の施設も含めて)少なくない.直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)適応疾患が見つからずワルファリン・ジレンマの回避目的でヘパリン・ブリッジを開始したものの,INR調整に時間を要したり,腸管安静を要する状況が生じ,結果的に脳梗塞急性期治療としてヘパリン持続点滴が行われていたという実態もあろう.しかし,ヘパリンにはヘパリン起因性血小板減少症(HIT)という重篤な合併症があり,これを避けるべく心房細動例には当初からDOACを推奨する.観察研究だがDOAC急性期投与の妥当性も示されつつあり,出血合併症にはすべてのDOACに中和薬が使用できる状況が整った.「とりあえずヘパリン」という考えは捨て,患者に最適なDOACを積極的に活用する姿勢が求められる.
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