Japanese
English
特集 現代における解離—診断概念の変遷を踏まえ臨床的な理解を深める
解離性障害の器質論—どこまで解明されているか
Organic Perspective of Dissociation and Psychiatry
金 吉晴
1
Yoshiharu Kim
1
1国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所
1National Institute of Mental Health, National Center for Neurology and Psychiatry, Tokyo, Japan
キーワード:
心的外傷後ストレス症
,
posttraumatic stress disorder
,
PTSD
,
海馬
,
hippocampus
,
器質力動論
,
théorie de organo-dynamisme
,
側頭葉てんかん
,
temporal lobe epilepsy
Keyword:
心的外傷後ストレス症
,
posttraumatic stress disorder
,
PTSD
,
海馬
,
hippocampus
,
器質力動論
,
théorie de organo-dynamisme
,
側頭葉てんかん
,
temporal lobe epilepsy
pp.1067-1071
発行日 2024年8月15日
Published Date 2024/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405207357
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抄録
心的外傷後ストレス症(PTSD)が日本で関心を集めたのは,災害や犯罪などの「心の被害」を代表するものと思われたためである。しかし,日本では生命に関わる体験とPTSDの生涯有病率がそれぞれ60%と1.3%であり,両者の間には多くの要因が関与すると考えられる。トラウマの影響については心因論と器質論が交錯してきたが,その距離は現代では非常に近接している。しかし,両者の有機的な連関には不明な点が多い。本稿では側頭葉てんかんとPTSD症状の類似性を手がかりとして,PTSDには心因的な要因はあるとしても,個別の症状形成においては辺縁系に特異的な要因の影響を受けている可能性を推測した。エイ(Ey)は意識の解体によって進化論的に古いプログラムが活性化するという仮説で精神疾患を説明したが,PTSDでは極度の情動的負荷によって辺縁系に特化して同様のメカニズムが生じているとも考えられる。辺縁系に存在する恐怖記憶制御回路の研究の進展を通じて,いっそうの解明が期待される。
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