Japanese
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特集 現代における解離—診断概念の変遷を踏まえ臨床的な理解を深める
現代におけるジャネと解離—フランスの文脈からの再考
Janet and Dissociation in Our Time : Reconsideration in the French Context
河野 一紀
1
kono KAZUNORI
1
1梅花女子大学心理こども学部心理学科
1Faculty of Psychology and Child Education, Department of Psychology, Baika Women's University, Osaka, Japan
キーワード:
ピエール・ジャネ
,
Pierre Janet
,
解離
,
dissociation
,
統合
,
integration
,
精神分析
,
psychoanalysis
,
欲動論
,
drive theory
Keyword:
ピエール・ジャネ
,
Pierre Janet
,
解離
,
dissociation
,
統合
,
integration
,
精神分析
,
psychoanalysis
,
欲動論
,
drive theory
pp.1047-1053
発行日 2024年8月15日
Published Date 2024/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405207354
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抄録
ピエール・ジャネ(Pierre Janet)の復権の動きは,Ellenbergerによる『無意識の発見』(1970)に端を発し,多重人格と解離をめぐる議論を経て,北米を中心とした英語圏におけるFreudの精神分析の相対化・価値下げという形で展開してきた。一方,Janetの母国フランスでは,dissociationの語は統合失調症と結びつけられたため解離概念には十分な関心が払われず,精神分析からもその業績は忘却されてきた。他方で,米国の対人関係精神分析はJanetと同様に解離とトラウマの関係を強調し,解離を抑圧とは異なる水準での防衛として位置づけている。本稿ではフランス精神分析における欲動論の展開を参照しつつ,解離概念の力動論的理解を深めると同時に,人格の統合とは異なる形の治療モデルを提示した。Janet自身は意識の統合機能を重視したため解離に力動的意味を与えることはなかったが,その理論は精神分析とのさらなる対話を続けることで,現代の解離研究に寄与すると考えられる。
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