Japanese
English
特集 ひきこもりの理解と支援
ひきこもりと「トラウマ」
Hikikomori and “Trauma”
斎藤 環
1
Tamaki SAITO
1
1筑波大学医学医療系社会精神保健学
1Social Psychiatry and Mental Health, Faculty of Medicine, University of Tsukuba, Ibaraki, Japan
キーワード:
ひきこもり
,
Hikikomori
,
トラウマ
,
trauma
,
自傷的自己愛
,
self-mutilating narcissism
,
対話実践
,
dialogical practice
Keyword:
ひきこもり
,
Hikikomori
,
トラウマ
,
trauma
,
自傷的自己愛
,
self-mutilating narcissism
,
対話実践
,
dialogical practice
pp.1471-1477
発行日 2022年11月15日
Published Date 2022/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405206776
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抄録 ひきこもりとトラウマの関係性は単純ではない。いじめ被害のトラウマからひきこもった事例においても,家族による不適切な対応が二次被害をもたらし,ひきこもり経験そのものがトラウマになるなど,複数の要因が複雑な影響をもたらしていることが多い。あるいはひきこもることによって慢性的に尊厳が傷つけられた結果,当事者が「自傷的自己愛」に苦しむ可能性もある。これは,過激な自己批判を口にしつつも,その根底に自己愛が想定されるような矛盾した感情である。こうした尊厳の傷つきは,両親の不適切な対応がその一因である場合が多く,両親に対して強い恨みや怒りを向けるケースも少なくない。そうした場合に有効な対処が「対話」である。フィンランド発祥のケアの技法であるオープンダイアローグ的な対話実践では,議論や説得,アドバイスを控えてひたすら本人の訴えに耳を傾け,その内容を理解し共有する。この過程でトラウマが軽減され社会参加につながった事例を提示した。彼は自身の経験から,対話が当事者の主体性と自発性を回復させ,家族全体の再生を可能にすると述べている。
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