増大号特集 精神科診療のエビデンス—国内外の重要ガイドライン解説
第4章 双極性障害
日本うつ病学会治療ガイドライン Ⅰ.双極性障害2017
寺尾 岳
1
Takeshi Terao
1
1大分大学医学部精神神経医学講座
1Department of Neuropsychiatry, Oita University Faculty of Medicine, Oita, Japan
pp.560-566
発行日 2020年5月15日
Published Date 2020/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405206072
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ガイドラインのポイント
・この双極性障害治療ガイドラインは,臨床経験のある精神科医が参考にすることを想定しているが,いかなる臨床研究の結果(エビデンス)にも限界があることを知った上で,ガイドラインを参考にすべきである。
・ガイドラインは医師の治療裁量権をしばるものではない。患者の症状は一人ひとり異なるものであり,患者の病前性格も,置かれた社会環境にも違いがある。どのような治療が最善なのかは主治医のきめ細かな診立てと総合的な判断によるべきである。逆に,ガイドラインに沿って治療しさえすればそれで十分だ,とする考えが誤解であることは論をまたない。
・エビデンスに乏しいとしても,心理社会的療法は薬物療法と並んで重要な治療である。医師-患者関係の構築,患者や家族の苦悩への共感と支持,その時々の症状や患者の抱える問題に対する専門家としてのアドバイスなどは治療の基盤をなすものである。この治療ガイドラインは,このような姿勢をもって治療にあたる医師にこそ有用なものである。
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