書評
—加藤忠史 責任編集,山脇成人,神庭重信 総監集—《精神医学の基盤》4—精神医学の科学的基盤
田中 謙二
1
1慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室
pp.484
発行日 2020年4月15日
Published Date 2020/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405206052
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《精神医学の基盤》第2期というくくりで,「科学的基盤」,「仮説とその検証」,「疫学と臨床試験」の3つが立案され,その1つめ「科学的基盤」を加藤忠史氏が担当した。加藤氏は,四半世紀にわたり日本の脳科学を牽引し続けた巨人であり,書籍も多い。彼の書籍の一つに過ぎないのなら,読まないで彼と直接話したほうが時間の節約になると思いながら読み始めた。幸い,加藤氏は編者であり,彼の書籍の一つではなかった。加藤氏の声かけに応じた14名が,独自の視点で,「精神医学の科学的基盤」について書いている。総じて,研究者寄りの著者の作品は,担当研究分野について当たり障りなく,著者の思い入れを排除して書かれている。皆,真面目だ。それはそれで良い。目を引いたのは,この人が精神科のサイエンスを語るのかと思わせる人選と,その私の浅い考えを吹き飛ばす精神医学についての各人の熱量であった。
書評の結語として,先に述べる。精神医学を科学の視点から学びたい,科学として扱いたい,科学として研究したいという若手に読んでもらいたい。そして,10年くらい科学研究を続け,精神医学の科学的基盤を知ったつもりになっている中堅に読んでもらいたい。
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