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特集 精神科臨床から何を学び,何を継承し,精神医学を改革・改良できたか(Ⅰ)
病名変更が何をもたらしたか—痴呆から認知症へ
What were Caused by Replacing the Word for Dementia from Chiho to Ninchisho?
粟田 主一
1
Shuichi Awata
1
1東京都健康長寿医療センター研究所
1Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology, Tokyo, Japan
キーワード:
Dementia
,
Replacing the word for dementia
,
Public awareness
,
Policy development
,
Dementia friendly communities
Keyword:
Dementia
,
Replacing the word for dementia
,
Public awareness
,
Policy development
,
Dementia friendly communities
pp.1191-1198
発行日 2018年11月15日
Published Date 2018/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205709
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はじめに
2004年12月24日に厚生労働省の「『痴呆』に替わる用語に関する検討会」(以下,検討会)は,一般的な用語や行政用語としての「痴呆」について,以下のような結論に至ったと報告した8)。
①「痴呆」という用語は,侮蔑的な表現である上に,「痴呆」の実態を正確に表しておらず,早期発見・早期診断等の取り組みの支障となっていることから,できるだけ速やかに変更すべきである。
②「痴呆」に替わる用語としては,「認知症」が最も適当である。
③「認知症」に変更するにあたっては,単に用語を変更する旨の広報を行うだけではなく,これに併せて,「認知症」に対する誤解や偏見の解消等に努める必要がある。加えて,そもそもこの分野における各般の施策を一層強力にかつ総合的に推進していく必要がある。
この報告を受けて,関連諸学会においても,学術用語としての「痴呆」を「認知症」に変更する方向で検討が進められ,今日では,一般的にも,行政的にも,学術的にも,「認知症」という用語が広く使用されるようになっている。本稿では,「痴呆」という用語の呼称変更が検討されるまでの経緯と「認知症」という用語が誕生するまでの経緯を概観した上で,呼称変更が何をもたらしたかについて私見を述べることとする。
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