書評
—傳田健三 著—なぜ子どもは自殺するのか
大森 哲郎
1
1徳島大学医歯薬学研究部精神医学分野
pp.1055
発行日 2018年9月15日
Published Date 2018/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205686
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日本の自殺者数は1998年から10数年間にわたり年間3万人を超えて高止まりしていたが,さまざまな取り組みが功を奏して2010年ころから減少に転じ,2017年には2万1千人ほどになっている。限りなくゼロに近づけるべき数値とはいえ,良い傾向である。ところがここには思わぬ落とし穴があった。全体数は顕著な減少を示しているにもかかわらず,青少年と若年層の自殺者数はまったく減っていないのである。それどころかむしろ増加傾向を示しているという。これまでの取り組みがこの世代には通用しないのである。
2002年出版の「子どのうつ病—見逃されてきた重大な疾患」で,当時はそれとして認知されていなかった状態をうつ病として見る診方を提示して以来,子どものうつ病に関して発言を続けている著者が,この状況を看過できないのは想像に難くない。
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