いい本見つけた!
—鎌田 慧 著—「家族が自殺に追いこまれるとき」,他
柳原 清子
1
1日本赤十字武蔵野短期大学
pp.472-474
発行日 2001年5月1日
Published Date 2001/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906036
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「自殺」をめぐる3冊
「布団の上で…」の意味
暮れに親友(看護婦)の父が亡くなった.片田舎の小さな病院で,ガン末期のその人は苦しい息の中から看病の礼をいい,「泣くなよ」とひと言告げて逝った.娘が泣き虫であることを知っていた父親の言葉だった.私はこたつのほのかな暖かさを感じながら,その話を聞いていた.「それにしてもよかった.布団の上でお父さん看取れてよかったよ」.私から出た言葉はこれだった.友も深くうなずいた.一見奇妙に思える会話だけれど,布団の上ではない死,すなわち自死という形で身内を失ったことがあり,また(仕事上)自殺を見聞することが少なくない我々には,布団の上の死は安堵にも似た感慨だった.
病いとか,障害を持つということ.その周辺には「自殺念慮」が色濃く漂う.雪深い土地でただひたすらに働きづくめできた老人たちが,体が不自由になったとき,「家族に迷惑はかけられん」と命を絶つ.こうしたことを聞くたびに,身を粉にして働くことと,耐えることを教える豪雪地帯の風土が,自殺に対してとても寛容というか,自死を許容するのを感じてきた.「役立たず」という言葉が重い.
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