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はじめに
National Institute of Mental Health(NIMH)は,2009年より神経生物学や観察可能な行動の側面から精神障害の分類を試みようとするResearch Domain Criteria(RDoC)プロジェクトを開始したが,睡眠/覚醒制御系システムは,このプロジェクトのクライテリアの一つに含まれている。さらに本システムの構成として,arousal,概日リズム,睡眠/覚醒が含まれており,それぞれ下位項目としてmolecules,cells,circuits,physiology,behaviour,self-report,paradigmが挙げられ,さらに下位項目ごとに複数のキーワードが挙げられ,睡眠/覚醒制御系に関する多種多様な分野がかかわっていることが想定されている。
現在利用可能な睡眠/覚醒制御系の客観的な評価法として,睡眠ポリグラフ検査(polysomnography:PSG),反復睡眠潜時検査(multiple sleep latency test:MSLT),アクチグラフィ,概日リズムのマーカーとしてのメラトニン測定などが挙げられる。また主観的な評価としては,Epworth sleepiness scaleやPittsburgh sleep quality indexなどの質問紙,睡眠日誌などが挙げられる。これらの客観的評価および主観的評価は,睡眠障害の評価に必須であり,不眠や過眠の症状を呈することの多い精神障害患者において重要な検査である。たとえば,中枢性過眠症の一種のナルコレプシーは,PSGやMSLTで入眠時レム睡眠(sleep onset REM period:SOREMP)の出現やオレキシン低値により診断され,近年の研究成果により客観的なマーカーによる診断が可能となった疾患である。さらに,レビー小体型認知症の診断基準の一つに,レム睡眠行動障害(REM behaviour disorder:RBD)が含まれ,これは睡眠中の異常行動の訴えとPSGにおける筋緊張の低下を伴わないレム睡眠(REM sleep without atonia:RWA)により診断できる。このように,研究の進歩により客観的指標による診断やサブ分類が可能となる疾患が増えてきている。
以上を踏まえた本稿では,睡眠/覚醒制御系の評価と精神障害との関連に関する研究成果を紹介しながら,精神障害における睡眠/覚醒系評価手法の診断マーカーとしての可能性を探る。
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