Japanese
English
特集 「統合失調症」再考(Ⅰ)
生物学と統合失調症—物質と物質でないもの
Biology and Schizophrenia:Material or ideal
糸川 昌成
1,2
,
新井 誠
1,2
,
針間 博彦
2
,
齋藤 正彦
1,2
Masanari ITOKAWA
1,2
,
Makoto ARAI
1,2
,
Hirohiko HARIMA
2
,
Masahiko SAITO
1,2
1公益財団法人東京都医学総合研究所病院等連携研究センター統合失調症プロジェクト
2東京都立松沢病院精神科
1Center for Medical Research Cooperation, Project for Schizophrenia Reseach, Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science, Tokyo, Japan
2Department of Psychiatry, Tokyo Metropolitan Matsuzawa Hospital
キーワード:
Materialism
,
Idealism
,
DNA
Keyword:
Materialism
,
Idealism
,
DNA
pp.1037-1044
発行日 2017年11月15日
Published Date 2017/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205487
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はじめに
近代科学は,16世紀にRené Descartesが世界を物質と物質でないものに二分し,物質世界の物理的法則のみを探求する領域として,科学という学問分野を打ち立てたことに始まった13,18)。この物質世界の探究は近代医学にも波及した。たとえば,かつて精神科病床の半分を占めた進行麻痺や不治の病だった結核など,人類にとって圧倒的脅威だった感染症を,細菌というミクロな生命体をペニシリンやストレプトマイシンなど抗生物質によって死滅させる医学技術によって克服した。
科学が感染症を攻略すると,次は糖尿病やがんといった慢性疾患を守備範囲におさめ,20世紀に入ると最後の秘境である脳への挑戦が始まった。精神医学には脳という物質がかかわることは間違いないのだが,一方で心という物質でないものともまた密接な関係にある。物質のみを探究してきた科学が初めて挑んだ,物質でない心の探究がどのように展開してきたのだろうか。本稿では,生物学が統合失調症に与えた影響について,1)ゲノム研究と技術革新,2)生物学の臨床医学への影響,3)精神医学の疾病概念,4)実体論(モノ)と状態論(コト)に沿って論考を進める。
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