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特集 「統合失調症」再考(Ⅰ)
発達障害の流布によって統合失調症の見方は変わったのか?
Has the Prevalence of the Concept;“Development Disorder” Changed our Attitude for Diagnosing Schizophrenia?
広沢 正孝
1
Masataka HIROSAWA
1
1順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科
1Graduate School of Sports and Health Science, Juntendo University, Inzai, Japan
キーワード:
Schizophrenia
,
Autism spectrum disorder
,
Self-structure
,
Delusion
,
Negative symptoms
Keyword:
Schizophrenia
,
Autism spectrum disorder
,
Self-structure
,
Delusion
,
Negative symptoms
pp.1029-1036
発行日 2017年11月15日
Published Date 2017/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205486
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はじめに
近年,統合失調症と診断されていながら,実は自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder;ASD)が疑われる症例に少なからず遭遇する。そればかりか,精神科病棟の長期入院患者の中には,長年にわたり「統合失調症といわれ」,統合失調症患者として年を重ねてきたASD者もいる。この背景には,20世紀末までの本邦の精神医学において,ASDを含む成人の発達障害という診断視点が育まれてこなかった事情が存在する。21世紀の今日,成人における発達障害概念の普及により,我々はこのような患者に対して適切な診断行為が行えるようになったことは事実である。
しかし統合失調症とASDとの関係は,それほどまでに単純明快とはいかない。事実,発達障害概念の流布が,統合失調症の診たて方に変化をもたらした可能性すらある。統合失調症とASDとが,同じ成人の精神医学を舞台として論じられるようになった現在,それぞれの成因や臨床像を把握するためにも,双方の精神病理を再考する必要が生じてきた。
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