特集 遺伝子検査―診断とリスクファクター
4.遺伝子分析―リスクファクターの推定
5) 精神疾患
糸川 昌成
1
,
新井 誠
1
,
小幡 菜々子
1
Masanari ITOKAWA
1
,
Makoto ARAI
1
,
Nanako OBATA
1
1東京都精神医学総合研究所統合失調症プロジェクト統合失調症研究チーム
キーワード:
遺伝子多型
,
関連研究
,
連鎖研究
Keyword:
遺伝子多型
,
関連研究
,
連鎖研究
pp.1565-1571
発行日 2007年11月30日
Published Date 2007/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101468
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
統合失調症は幻覚や妄想を主症状とする精神科の代表的疾患で,生涯有病率が約1%と頻度が高く,糖尿病や高血圧などと並び,ありふれた病気(common disease)の1つと考えられている.双生児,養子研究などから,統合失調症に遺伝要因が関与することが明らかにされており,遺伝率(heritability)は約80%と算出されている.他のありふれた病気と同様に,弱い効果の複数の遺伝子が関与する(Gottesman, 1991)と仮定して研究が進められてきた.90年代以降の分子生物学的研究により,複数の具体的な感受性遺伝子が突き止められつつある.ただし,メンデル型遺伝疾患のように単一の遺伝子の変異が原因となる疾患ではないので,いわゆる「遺伝子診断」が実現する可能性は低い.ただし,「弱い効果の複数の遺伝子」が将来「補助的診断」に役立つかもしれないと考える研究者は少なくない.
疾患と関連する遺伝子の同定には,大きく2つのアプローチがある.1つは,大きな多発家系や罹患者と兄弟の組み合わせ(罹患同胞対)を多数集めて解析し,罹患者に共通したDNAマーカーが連続するゲノム領域を絞り込み,位置的(ポジショナル)に感受性遺伝子を同定する方法で連鎖研究と呼ばれる.もう1つは,病態仮説や抗精神病薬の作用部位などを候補遺伝子として解析し,患者群と対照群で多型の頻度差をみる関連(相関)研究である.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.