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はじめに
統合失調症は,思春期〜成人早期に発症することが多く,慢性の経過をたどる精神疾患である。統合失調症患者の機能的予後は一般的に不良であることが知られているほか19),近年では平均余命も一般人口と比較し約15年短いことが明らかになっており7),この疾病による社会的損失は莫大である。
統合失調症における精神病未治療期間(duration of untreated psychosis;DUP)の研究からDUPが短いほど症状は軽く治療反応性が良好であることが示され17),また介入研究でDUPを短縮することにより患者の症状や予後が改善されたと報告され13),統合失調症においても早期診断,早期治療が重要である。
統合失調症はさまざまな非特異的症状を呈する1〜3年程度の前駆期間を経て発症することが多い。前駆状態については一定の臨床症状をat-risk mental state(ARMS),すなわち精神病発症リスクの高い状態として操作的に診断する方法がとられている14,27)。近年,ARMSと診断された患者がさまざまな介入によって統合失調症などの精神病性障害を発症することを防ぐことができるか否の検討が行われており,薬物療法や認知行動療法の有効性に関するエビデンスが集積しつつある22)。一方で,ARMSと診断されてもその後精神病性障害を顕在発症する割合は3割程度であるため4),統合失調症などの精神病性障害の発症を予測できるようなサロゲートマーカーの開発が望まれている。事象関連電位(event-related potentials;ERPs)や脳形態磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging;MRI)は統合失調症やARMSを対象とした研究が数多くなされており,そのようなサロゲートマーカーになり得るモダリティとして期待されている。
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