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統合失調症におけるバイオマーカーの必要性
統合失調症は,幻覚,妄想などの陽性症状,意欲欠如や感情鈍麻といった陰性症状,および遂行機能障害などの認知機能障害を主症状とする精神障害である。前駆期,初発期,慢性期の順に経過することが多い。前駆期には,社会的・職業的な機能低下や微弱な精神病症状を呈する。初発期にはじめて本格的な精神病症状を呈し,統合失調症と診断されることが多い。その後数年が経過して慢性期に至る。現在,統合失調症を含むほとんどの精神障害の診断は,患者の訴える症状や徴候の観察に基づいて行われている。本来ならば,医学的診断は病因や病態生理に基づくべきである。しかし,ほとんどの精神障害で病態生理の多くが明らかになっていない現状では,診断は症候の観察に頼らざるを得ない。こうした臨床診断に基づき生物学的研究が行われてきたが,その結果,同じ臨床診断の中に異なる生物学的な基盤を持つ集団が混在すること20)や,異なる臨床診断でも同じ生物学的な基盤を共有すること24)が報告されている。したがって,バイオマーカーを用いて生物学的に均質な患者集団を分類することができれば,予後予測,治療反応性の予測,新規治療法の開発などに有用であることが期待される16)。
バイオマーカーは,患者での研究においてより信頼性が高いことや臨床的に意味がある指標であることが重要だが,生物学的基盤の解明のためにはモデル動物の作出と解析も重要となる。そのためには,ヒトや動物で共通に計測できるトランスレータブルなバイオマーカーの開発が求められる。統合失調症ではこれまでに多くの生物学的研究が行われてきたが,上記のような条件を満たすバイオマーカーはそれほど多くはない。その中で有望な候補として考えられるのがミスマッチ陰性電位(mismatch negativity;MMN)である。
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