特集 認知行動療法の現在とこれから—医療現場への普及と質の確保に向けて
特集にあたって
松本 和紀
1
Kazunori MATSUMOTO
1
1東北大学大学院医学系研究科精神神経学分野
1Department of Psychiatry, Tohoku University Graduate School of Medicine, Sendai, Japan
pp.397
発行日 2017年5月15日
Published Date 2017/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205375
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認知行動療法は,さまざまな精神疾患における標準的な治療法のひとつとして多くの国際的なガイドラインにも掲載され,一部の地域や国々では普及も進んでいるが,日本での普及は未だ遅れているのが現状である。しかし,国民のニーズの高まりや関係者の努力により2010年度の診療報酬改定でうつ病に対する認知行動療法が診療報酬として算定可能となり,これを機に認知行動療法のセラピストを育成するための研修が厚生労働省の事業として開始されるようになった。さらには,2016年度の診療報酬改定ではパニック障害,社交不安障害,強迫性障害,心的外傷後ストレス障害へと対象疾患が拡大した。また,看護師が医師とチームを組んで施行した場合にも算定可能となり,施行者の職種拡大の方向性も打ち出され,今後は,公認心理士を含めた多職種への拡大も期待されている。
このように近年,わが国においても認知行動療法に対する理解や普及の流れが促進されるようになってきた。しかし,認知行動療法に対する教育体制が十分に整備されていないわが国では,認知行動療法についての誤解も多く,認知行動療法“もどき”が不適切に導入されることによる弊害も散見される。エビデンスに基づいた質の高い認知行動療法を,必要とされる多くの患者に届けるためには,多くの精神医療関係者が認知行動療法についての知識と理解を深めると同時に,認知行動療法の質を確保した上で普及を図っていくことが重要だと考えられる。
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