巻頭言
精神医学・医療について—最近,考えること
山内 俊雄
1
1埼玉医科大学
pp.394-395
発行日 2017年5月15日
Published Date 2017/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205374
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冒頭から私事で恐縮であるが,医師としての大半を大学で過ごし,しかも後半は,心ならずも管理的な立場にあり,精神科医としての仕事も思うにまかせなかったという思いを強く抱きながら過ごしてきた。そこで,公的な役割を終えるにあたって,初心に帰って,一精神科医としてじっくり患者さんと向き合った診療をしてみたいと考えた。幸い,在籍していた大学のクリニックにはメンタルクリニックがあり,そこで時間をかけた精神医療をやりたいと考え,大学側の了解を得て始めた精神科診療も数年が経過した。
クリニックでの診療を開始して衝撃を受けたことのひとつは,訪れる患者さんが大学で診ていた方々と大きく異なることであった。もちろん大学でも精神症状の軽症化といった変化はあったにしても,教科書的な症状を抱えており,この患者さんの症状は統合失調症でみられるものであり,感情障害ではこのような症状が出現する,などと学生に説明するのにさして困難を覚えなかった。ところがクリニックでは,このような人たちが精神科を訪れるのかと驚き,時には診断に迷い,また時にはこれは精神科医の仕事なのか,と自問するようなケースに遭遇することも稀ではない。
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