特集 インターネット依存の現在
特集にあたって
樋口 進
1
Susumu HIGUCHI
1
1独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター
1National Hospital Organization Kurihama Medical and Addiction Center, Yokosuka, Japan
pp.5
発行日 2017年1月15日
Published Date 2017/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205295
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IT技術の急速な進歩に伴い,インターネット(以下,ネット)依存は,爆発的に広がっていると推測されている。また,この問題は青少年でより深刻であることが知られている。我々が厚生労働科学研究の一環として2012年に全国約10万人の中高生に対して行った調査によると,男子生徒の6.2%,女子の9.8%の者にネット依存が強く疑われ,その数は約52万人と推計された。また,別の厚生労働科学研究調査によると,2008年から2013年の5年間に,成人でネット依存傾向にある者の数は1.5倍に膨れあがり,後者における推計値は420万にも及んだ。
実際の臨床場面でも若者の受診が多く,私どもの専門外来では,中高生だけで全体の50%を,また,大学生まで加えると全体の70%を占めている。最も依存しているネットサービスは,依然としてオンラインゲームであるが,最近,スマートフォンのさまざまなサービスにはまっている者が増えてきている。ネット依存の学業,家庭内関係,健康などへの影響が大きく,遅刻,欠席,成績低下が多くの者にみられ,不登校,留年,退学,転校も少なからず認められる。また,ネット使用について親に対する暴言・暴力はほぼ全例にみられ,昼夜逆転,引きこもりなども稀ではない。さらに,犯罪につながるケースも認められる。合併精神障害を有する患者も一定の割合で認められ,ADHD,自閉症スペクトラム障害,社交不安などの合併頻度が高い。
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