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はじめに
レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies;DLB)は初老期・老年期に発症し,幻視に代表される特有の精神症状およびパーキンソニズムを示す神経変性疾患である。DLBは剖検で確定診断された老年期認知症の15〜20%を占め,アルツハイマー病(Alzheimer disease;AD)に次いで多いとされる。
DLBの臨床診断基準を表1に示す15)。進行性の認知機能低下に加え,中核的特徴のうち2つがあればprobable DLB,1つあればpossible DLBと診断する。また中核的特徴の1つ以上に加えて示唆的特徴が1つ以上確認されればprobable DLBと診断できる。診断基準ではDLBは認知機能障害がパーキンソニズムより先行ないしほぼ同時に出現するものとされ,明らかなパーキンソニズム出現後12か月以降に認知症が出現した場合は認知症を伴うパーキンソン病(Parkinson's disease with dementia;PDD)と診断される。しかしDLBとPDDは臨床・病理学的に連続性を有するため,両者を包括してレビー小体病(Lewy body disease)と呼ぶことが認められている。レビー小体の主要構成蛋白はα-シヌクレインであり,主にグリア内にα-シヌクレインが蓄積する多系統萎縮症とともにα-シヌクレイノパチー(α-synucleinopathy)と称される。
他の認知症とDLBの大きな違いはDLBが“全身病”である点であろう。DLBでは大脳と脳幹を含む中枢神経系に神経脱落とレビー小体の出現をみるが,レビー小体は脳・脊髄ばかりでなく,心臓,消化管,膀胱,皮膚などの末梢自律神経系にも認められる。病変の分布によって症状の表現型が異なり,認知機能障害以外の症状が優勢となる例もあるため,非典型的な症例では誤診されやすい。また治療・ケアにおいては,認知機能障害や行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia;BPSD)のみならず,身体症状も含めた総合的対応が必要となる。
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