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はじめに—前頭側頭型認知症の概要
前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia;FTD)とは,前頭葉および側頭葉前方部に病変の首座を持ち,特徴的な行動症状や言語症状を呈する神経変性疾患群であり,以前はPick病と呼ばれていた病態である11)。FTDは多くの背景病理を持つヘテロジニアスな疾患群であり,臨床的には最も多くを占める行動型FTD(behavioral variant FTD;bvFTD),そして原発性進行性失語(primary progressive aphasia;PPA)の2亜型,すなわち意味性PPA(semantic variant PPA;svPPA)と非流暢性PPA(non-fluent variant PPA;nfvPPA)に大分される。
FTDという用語は広義ではこれらを包括する臨床的な用語として用いられ,狭義ではbvFTDと同義として用いられる。一方で病理学的な概念としては前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration;FTLD)という用語が用いられる。本稿では原発性進行性失語は別項で述べられるので,bvFTDと同義の臨床症候群としてFTDという用語を用いる。
FTDは特に高齢者ではADに比して患者数が少ないため,これまでは比較的稀な疾患であると考えられてきた。実際には若年発症例においては決して稀な病態ではなく13),欧米では65歳以下においてはADと同程度の発症率と有病率を持つとされる8)。比較的若年で発症すること,後述のような行動症状が病像の主体であること,そして疾患自体の認知度が低いことなどから,FTDは介護者の負担が非常に高い疾患である9)。そのようなFTDの認知機能障害,行動・心理症状,そして生活障害の構造について本稿では述べていく。
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