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はじめに
レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies;DLB)は,比較的新しい疾患概念であり,1995年にイギリスで開催された第1回国際ワークショップでDLBという名称が提唱され,その臨床および病理診断基準が1996年に報告され27),臨床診断が可能になった。
DLBの基礎となったのは,小阪らが1976年17)以来の報告を基に1984年に提唱したびまん性レビー小体病diffuse Lewy body disease(DLBD)である18)。このDLBDの臨床像の特徴は進行性の認知症とパーキンソン症状であり,病理学的特徴は大脳皮質・扁桃体・マイネルト基底核・脳幹諸核を含む中枢神経系や自律神経系に広範に多数のレビー小体とレビー神経突起(両者を合わせてレビー病理Lewy pathologyとよぶ)が出現することであるが,しばしば種々の程度のアルツハイマー病変を伴う。小阪は1990年に日本での剖検例報告をレビューして,DLBDを種々の程度のアルツハイマー病変を合併する通常型common formとそれを伴わない純粋型pure formに分類し,両者では発病年齢も臨床像も異なることを強調した19)。すなわち,通常型では初老期や老年期に発病することが多く,認知機能の障害が主体であるが,しばしばパーキンソン症状が加わる。一方,純粋型では65歳以下の発症が多く,パーキンソン症状で初発し,後に認知症を伴うことが多い。
1996年のガイドライン27)については,specificityは高いがsensitivityが低いことが示され,2003年に第3回国際ワークショップが開催され,その結果が2005年にCDLBガイドライン改訂版29)として報告された。その臨床特徴は,進行性の認知症,認知機能の変動,具体的な内容の幻視とそれに基づく妄想,特発性のパーキンソン症状,REM睡眠行動障害(RBD),抗精神病薬への過敏性,自律神経症状,抑うつなどである。一方,病理学的には,レビー病理の出現様式により新皮質型,辺縁型または移行型,脳幹型に分類された。
最近では,認知症を伴うパーキンソン病(PDD)とDLBとは基本的には同じであると考えられるようになったが,小阪らは1980年にレビー小体病Lewy body diseaseを提唱し,パーキンソン病(PD)やPDD,DLBDを含めてLewy body diseaseと呼ぶことを主張してきた19)。この考えは最近になって国際的に承認されるようになった25,29)。
DLBはアルツハイマー型認知症(Alzheimer-type dementia;ATD)に次いで2番目に多い認知症であり,高齢の認知症患者の10数%から20数%を占める比較的ありふれた認知症である29)。しかし,ゲートキーパーであるかかりつけ医のみならず専門医の間でも,まだ十分知られていないのが現状であり,誤診されていることが多く,初期に診断して早期に治療・介入することが重要である20)。
現時点では,DLBの脳病変の進展過程そのものに修飾を加えるような根本的治療法(disease-modifying therapy)は存在しない。また,世界的にもPDDに対するリバスチグミンに保険適用が認められている国があるだけで,DLBに保険適用が認められた治療法はない。治療の対象となるのは認知機能障害,行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia;BPSD),錐体外路症状,睡眠障害を含む自律神経症状であるが,これらの中で1つの症状を改善させる治療は他の症状を悪化させることがあり,治療には豊富な経験と専門的な知識を要する。本稿では,薬物療法について最近の総説5,39)やガイドライン35)を参考にまとめてみたい。
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