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周産期医療の特徴
妊婦は無事に妊娠期間を過ごし,元気な赤ちゃんが生まれてくることを待ち望み,出産と同時に家族と一緒に幸せと希望に包まれる。これらの妊娠・分娩・産褥期(産後6週間)を色々な面からサポートするのが周産期医療である。妊娠は元来,生理的なものであり,病的な状態は少ない。妊娠・分娩・産褥期は,女性の一生の中で短期間に起こる最も大きなホルモンバランスをはじめとした身体的変化の時期である。それに伴い心理的にも劇的な変化が起こる時期といえる。すなわち,心理的には,妊婦自身と家族は妊娠したことを喜び,身体の変化とともに生まれてくる子への期待が高まる。しかし,一方で,見えないものには期待以上に不安も大きくなり,正常に経過し分娩に至る妊婦ですら妊娠中,うつ状態を認めることがある。
今から半世紀以上前の日本では,妊娠中から家族や隣人,産婆(助産師)の助けを借りて,ほとんどの出産は自宅で家庭的な雰囲気の中で行われており,妊婦の精神的負担もこのような状況で軽減されていた。現在では大家族による妊婦へのサポートは少なくなり,95%以上の妊婦の健康診査(妊娠中一定期間ごとの診察)や分娩は病院や診療所で行われている。日本では妊娠10か月間で健康診査は平均14回行われ2),正常分娩では5日間の入院,帝王切開でも約1週間の入院をもって退院し,通常は産後1か月目の1回の診察で妊婦の身体復帰の確認をもって終了する。これは,他の先進国と比べても密度の濃い診療形態である。この間,超音波装置や出生前診断などの高度な周産期医療技術の発展により胎児情報が豊富に提供され,まだ胎動を感じない時期より胎児を認識でき,母性や父性は以前より早く感じるようになった。このことは,妊婦に心理的好影響を与えている。
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