巻頭言
物語としての「当事者研究」
向谷地 生良
1
1北海道医療大学大学院看護福祉学研究科
pp.792-793
発行日 2015年10月15日
Published Date 2015/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204998
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2001年に北海道の浦河ではじまった「当事者研究」にとって,今年はエポックメイキングな出来事があった。一つは,今年の3月に東京で開催された統合失調症学会の冒頭のプログラムにおける講演で理事長の丹羽真一先生が「当事者研究は日本発の世界先端の治療パラダイム」であり,「当事者研究という方法は,当事者主体の治療法を具体化するものであり,体験的発見型・自身納得型の同意に基づく,内容的には(統合失調症の)陽性症状の認知行動療法である」と講演されたことと,この4月に東京大学の先端科学技術センター(先端研:RCAST)に「当事者研究」を冠した講座が開設され当事者研究ラボがオープンしたことである。
今から15年前にイベント(べてる祭り)の余興としてはじまった統合失調症などを持った人たちの研究活動が,時を経て一つの学問領域として認められ,当事者研究から生まれた実践知や経験知が精神医学や哲学,工学など,さまざまな学問領域と結びつきながら新たな知を創成する可能性を持った取り組みとしてスタートしたのである。
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