Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
統合失調症の治療のターゲットとして認知機能障害が注目されるようになり,認知機能の改善を目的としたさまざまなアプローチが開発されてきている。McGurkらのメタ分析では,統合失調症を対象とした認知機能改善のためのアプローチについて,課題のパフォーマンス,社会機能,精神症状のそれぞれの効果についての報告がされており,特に認知機能の課題による評価については効果量で0.41と,その有効性について期待の持てるものとなっている5)。近年は,認知機能改善のためのアプローチの効果について,精神症状や社会機能への寄与の観点からの報告も多くされるようになってきているが,統合失調症を対象とした治療や支援の最終的な目標を,人々が社会生活を円滑に送れるようにすることに置く,という点においては,どのようなアプローチ方法を採るにしても共通したものであると考えられる。本特集で紹介されるCRT(Cognitive Remediation Therapy)以外の認知機能改善のためのアプローチでも,たとえばNEAR(Neuropsychological Educational Approach to Cognitive Remediation)の実践ではコンピュータ課題での成果を日常生活へ般化させるためにブリッジングセッションが行われるなど,認知機能訓練の成果を社会生活機能の向上に結びつけるさまざまな工夫がされており,この辺りは各アプローチ間の違いや特徴として分かりやすいかと思われる。
また,統合失調症への治療,介入を行うといったときに,「どのような病期に」,「どのような場所で」支援を行うか,また,「どのような専門家が行うのか」,といった視点も重要であろう。本稿で紹介するCRTについては,課題遂行のための教示の工夫に重点が置かれることや,一対一の治療関係を基盤とするといった特徴のために,実施のための制限が比較的少ないことも重要な点であると考えられる。
本稿では,はじめにCRTの概略および特徴について述べた上で,筆者らの取り組みを報告することで,CRTの実践例の紹介としたい。
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.