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はじめに
近年,日本において精神障害を持つ人の就労に関する状況に変化が生まれつつある。これまでの先行研究では統合失調症を持つ人の就労率は20%程度とされており14),最も新しい厚生労働省の統計でも精神障害を持つ人の就業率は28.5%に過ぎず,身体障害者の45.5%,知的障害者の51.9%と比べて低い割合にとどまっている。また,就業していない者のうち52.8%が就業を希望しており,このうち実際に求職活動を行っているのは74.2%となっている。この数値は前回調査(50.7%)からは増加しているものの,同時期の調査での身体障害や知的障害(ともに83.2%)と比べると低い数値にとどまっている。なおかつ他2障害では,手帳の等級別の求職活動割合に差がなかったのに対し,精神障害では3級80.9%,2級73.7%,1級43.8%と重症度が高くなるについて就労を希望する不就業者の中で求職活動を行っている者の割合が低下しており,重い精神障害を持つ人は就職することに加え,そのための支援を受けることすらままならない実態が明らかとなっている6)。
こうした状況の改善をめざし,2013年の障害者雇用促進法の改正により精神障害者を法定雇用率の算定基礎に加える措置が追加された。また2018年より雇用義務化が決定しており,今後,日本の精神障害者の地域生活支援の場においてより有効な支援技法の実施が望まれる。
就労関連指標をアウトカムとした支援技法は複数あるが,就労に関連が深いと指摘される認知機能障害の改善を狙った認知機能リハビリテーション(cognitive remediation;CR)が注目されている。
認知機能リハビリテーションにはさまざまな技法があり10,18),アウトカムとして取り上げられている指標もまた多いが,就労関連指標をプライマリアウトカムとした介入研究も多くみられる1,9,11,17)。これらの研究の共通点としては,①トレーニングの課題としてコンピュータソフトを用いていること,②同時にevidence based practiceである援助付き雇用(supported employment;SE)か,もしくはそれに類する個別性の高い就労支援を実施していること,③コンピュータトレーニングと就労支援の間を橋渡しするgroup sessionが実施されていること,が挙げられる。これらの研究の結果,CRとSEを組み合わせた支援に参加した者はSEのみに参加した者と比べて,言語性記憶や遂行機能などの認知機能だけでなく就労率や賃金などの就労関連指標が良好であったとされている1,9,17)。
本項では上記の研究のうち,既存のソフトを用いており,なおかつマニュアルなどが入手可能なMcGurkらの研究グループによるThinking Skills for Work Programと呼ばれるプログラムの紹介とCRとSEを組み合わせによる支援を実施し,日本の対象者について認知機能や精神症状などの臨床的アウトカムおよび就労率などの就労関連のアウトカムに関する効果検討研究について報告する。
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