特別記事 フィールドワークの経験―研究者として臨床に入る
"しがみつく患者"との関わり
古城門 靖子
1
1神戸大学医学部附属病院看護部
pp.880-884
発行日 1999年11月10日
Published Date 1999/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900931
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
「精神科病棟における"難しい患者"の看護」
精神医療の現場では,看護者の関わりに対して攻撃的,拒否的で,看護者が治療的関わりを持てないでいるという患者がいる.こういった患者は「難しい患者」とされ,治療的な関わりを得られないために,入院が長期化してしまい,社会復帰を強く要請されている現場では,看護者はこういった患者の関わりの中で無力感や罪悪感を感じている.そこで,研究者自身,精神病院での1年間計51回のフィールドワークの中で「難しい患者」と関わり,①1難しい患者」の精神内界,②その患者に関わる看護者の感情,③双方の関係性の変化,④それに影響を与えられたと考えられる病棟内の人間関係,のそれぞれに焦点をあて,データを収集し,分析を行ない,「難しい患者」をめぐるさまざまな問題,そういった患者への看護者の治療的関わりの可能性を明らかにした.
対象者は,単科の精神病院に入院中の50歳代後半の独身女性Kさんである,Kさんは今から20年程前の卵巣・子宮摘出術を受けた後,うつ症状を訴え,その後,自殺企図があり,数回にわたり数か月間の入退院を繰り返し,今回の入院は5回目である.
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.