Japanese
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特集 現代社会と家族—諸病態との関連から
家族殺人の病理—親殺しの鑑定例から
Psychopathology of Parricide
福島 章
1
Akira Fukushima
1
1上智大学文学部心理学科
1Department of Psychology, Sophia University
pp.571-578
発行日 1989年6月15日
Published Date 1989/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204716
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I.はじめに
家族間の葛藤・病理を示す病理現象の一つが家族内暴力であり,それを最も極端で悲劇的な姿で示す現象が家族内殺人(homicide in family,intrafamilial murder)である。この家族内殺人は,加害者-被害者関係によって,子殺し,親殺し,同胞殺人,夫殺し妻殺し・愛人殺人等の類型が区別される。これらの殺人はまたそれぞれ,児童虐待,日本的な意味での「家族内暴力」,アメリカ的な意味での老人虐待,同胞抗争(狭義のカイン・コンプレックス),ワイフ・ビーティング(撲たれ妻症状群)など,「家族内暴力スペクトル」とでもいうべき広い裾野を持つが,家族内殺人は,その中核に位置する現象と考えられる。
家族は,非行・犯罪の犯因性人格環境としても,また犯因性行為環境としても重要かつ多次元的な役割を果たすことが知られている。そして,社会文化的状況の変化が急速に進み,家族の変容も当然著しい現代において,家族の病理と犯罪・非行の問題も従来とは違った視点からの考察が要請されるだろう。しかし,限られた紙数の中で,この問題の考えうるすべての側面を論じることはできない。
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