書評
姦通と殺人の小説
松本 一郎
pp.30-31
発行日 1958年2月1日
Published Date 1958/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201420
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いまの文学界はチヨツトした平安朝だ.平安時代には男の文学者よりも女流作家のほうが優れていて,紫式部,清少納言をはじめ,和泉式部だとか,赤染衛門だとか,道綱の母だとか,歴史的な人物がゾク出した.それに似た現象が,いまの文学界にみられ,男の作家をシリメに,才女たちが書きまくつている——というようなことが,新聞や雑誌,その他のジアーナリズムで云われだしてから,もう,2〜3年になる.大いに喜ぶべきことだろう.長いあいだ,ものも云えずにしいたげられてきた日本の女が,積極的に自分の考えを発表するようになつただけでも結構である.
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